東京大学大学院
工学系研究科

マテリアル工学専攻

秋元からのメッセージ

私はもともと薬学部出身で、学部時代には中枢神経系の薬理学に興味がありました。そんな中、卒論の研究室を決めるときに見学に行った東京女子医大の研究所に一目惚れし、バイオマテリアルの研究と出会いました。学生時代には、プラスチックやガラス、シリカといった固体の表面を高分子で改質し、細胞培養や薬物の分離に応用する研究を行っていました。

その後、理研の基礎科学特別研究員を経て本研究室に着任し、最初のうちは、それまでの自分の研究の流れから、細胞培養、生体組織再生への応用を目指した機能性ハイドロゲルの分子設計を行っていました。しかし、数年研究を続けるうちに、このままで良いのか、と強く考えるようになりました。

私自身は、薬学という広い範囲の学問を扱う学科を卒業し、バイオマテリアルという境界領域で研究をスタートしました。結果、身構えなくとも自然に異分野融合の研究ができるようになりましたが、自分の専門と言えるものが乏しく、研究活動は学問的基盤ではなくアイデアのみに頼っている状態でした。自分が専門と言えるような学問的基盤があって初めて、真にオリジナルな異分野融合ができるのではないか。

このような思いにより、2015年頃からハイドロゲルの表面に関する研究を行っています。「研究」のページに紹介した通り、ゲルの表面はまだ評価手法が確立しておらず、研究人口の少ない研究領域です。しかし、これまでよく知られなかった「ゲルの表面がどのような構造/物性をとるのか」を知ることは、ゲルをバイオマテリアルとして活用する際に確実に有用な情報になるのではないかと考え、現在は、ゲル表面を「作る」「知る」研究をメインに行っています。

私たちの研究グループでは、ゲル表面に関するあらゆる技術・知見の獲得を目指して研究を行っています。ここでは、学生の方々と私とは全くの対等であり、バックグラウンドの異なる研究者としてお互いに学び合いながら研究を進めています。日々、学生の方々から学ぶことは非常に多く、自分の勉強不足を悔しく思うことも少なくありません。

秋元 文

個人的には、ゲル表面に関する研究成果は積極的に産業展開していきたいと考えており、応用先も使えるならばどこでも、という感覚でいますが、将来的に一番やりたいことは、人間の生物学的発生や心の形成に関するメカニズム解明に寄与する研究、すなわち「人間の中身を知る」研究です。強い学問的基盤と広域異分野融合によって、ここに行き着くことが現在の目標です。

秋元 文

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