東京大学大学院
工学系研究科

マテリアル工学専攻

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自励振動高分子ゲル

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本ページでは、自励振動高分子ゲルの創製とバイオミメティック材料への応用展開について解説してゆきます。

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「ごあいさつ」のページで述べたように、従来、刺激応答性ゲルに関して数多くの研究が行われてきました。それに対して我々は、“刺激のon-offを必要としない一定条件下で、自ら膨潤収縮を繰り返すゲル”を世界で初めて開発しました。自ら拍動を繰り返す人工心筋とも言えますが、新しい時空間機能を持つ4次元ソフトマテリアルとして更なる展開を試みています。

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その詳細なメカニズムは割愛しますが、Belousov-Zhabotinsky (BZ)反応と呼ばれる化学振動反応(生体の代謝回路の一つ、TCA回路のモデル反応としても知られている反応)の化学エネルギーを力学エネルギーに変換する分子設計を行うことにより、このようなゲルを実現しました。

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本系では、化学的な酸化還元振動が高分子のメカニカルな振動に変換されます。ナノレベルでのポリマー鎖の伸縮振動、ゲルの均一な膨潤収縮振動、局所的な膨潤or収縮領域が化学反応波とともに伝播する蠕動運動などが起こります。

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これが記念すべき第1報です。引用回数は現在まで486回(2021.2.22現在)。

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その後20年以上に渡り系統的に研究を行い、Nature系の雑誌にたびたび取り上げられるなど注目を集めてきました。

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また面白いことに、この研究に興味を持っていただいた漫画家の方がいて、自励振動ゲルを開発した研究者が実際に人工心臓を作って不治の病気の恋人を助けようとする医療漫画が連載されました。我々の研究室や、研究室がある工学部4号館も登場します。

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この自励振動高分子ゲルを基盤として、生体模倣アクチュエータ、自動物質輸送システム、機能性流体など、種々の自律機能材料への展開を試みています。以下にその具体例を紹介します。

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自励振動ゲルを用いて作製された生体模倣アクチュエータの一例です。尺取り虫のように屈曲伸張を繰り返しながら自ら歩くゲル(人工尺取り虫)や溶液中で揺動しながら自ら泳ぐゲル、バネのように伸び縮みするゲルなどが作製されました。

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また自励振動ゲル管状に成形することにより、化学反応波の伝播とともに蠕動運動が生起し、内部の流体をパルス的に流したり物質を輸送したりすることができます。

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管状の自励振動ゲルが蠕動運動する様子はTOPページの動画中にも入ってます。

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自励振動高分子鎖をガラス基板表面上にグラフト修飾することにより、化学反応波の伝播に伴い高分子鎖が伸縮振動する「人工繊毛」を実現しました。アクチン/ミオシン系や微小管/キネシン系など生体分子を使って構築される分子モーターを、完全な人工高分子系で実現した例とも言えます。またそのグラフト領域を微細パターン化することにより、ダイオードのように化学反応波の伝播を一方向に制御することができます。

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また、親水性セグメントと自励振動セグメントを併せ持つブロック共重合体を作製することにより、その構造を自発的かつ周期的に変化させることに成功しました。ミセルの形成と崩壊が周期的に起こります。これを利用すると、次に示すように、周期的な変化を起こす人工細胞ができます。

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ブロック共重合体のセグメント比などをうまく調整することにより、ベシクル(ポリマーソーム)などの細胞類似の構造を形成させることができます。このように作製されたベシクルがユニマーとベシクルとの間で形成崩壊振動を起こしたり、膨潤収縮振動を起こします。

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さらに、自励振動するゲル微粒子を互いに架橋することにより、直径数十マイクロメートルほどの中空粒子(コロイドソーム)を作製することができます。興味深いのは先ほどのベシクルやこのコロイドソームが、座屈を伴う複雑な形状変化を示しながら振動することです。

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実際の生体における細胞の形状変化とのアナロジーが見られます。

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さらにこのブロック共重合体を精密に設計しトリブロック化することにより、ミセルが分散した状態と連結した状態の二つの間を自励振動させることができました。これにより、高分子溶液の粘性が振動し、最終的にアメーバのようにゾルゲル振動させることに成功しました。溶液をガラス管の中に入れると、ゾル状態とゲル状態を繰り返しながら、間欠的な前進運動を行います。

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以上、自励振動高分子ゲルに関する研究を簡単に紹介致しました。自励振動する動画の多くは記載の論文のSupporting Informationとして掲載されておりますので、興味ある方はそちらをご覧ください。

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このような一連の研究により、吉田は「2019年度 高分子学会賞」を頂くことができました。共同研究者も含め、当研究室で本研究に携わってくれた全ての方々に感謝致します。

また自励振動高分子ゲルについての最新の総説(雑誌「オレオサイエンス」第20巻第6号(2020年)pp.251-257に掲載)も以下に記しますので参考ください。

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